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​# 芳賀農村伝承

古の時代、芳賀農の集落に天を割いて現れたものがあった。

それは全身が黄金色に輝く仙人であった。

 

五色の玉の冠で飾り、高貴な銀の衣を纏い、琥珀の舟に乗り、二本の腕で真鍮の箱を抱え、四本の腕で鋼鉄の櫂を操っていた。

 

集落の長が丁重にもてなしたところ、仙人は大変喜んで、真鍮の箱を手渡して言った。

 

「これを以て栄えよ。しかし月の出ない夜以外に開けてはならない」

 

仙人の言う通りにすると、毎月箱の中から素晴らしい仕立ての絹と価値のある香などが取り出された。

 

ある満月の夜、これを不思議がった隣村の子供達がこっそりと箱を持ち出した。

 

彼らがそれを開けてみると、中に入っていたのは人間の首であった。

 

首は箱から飛び出すと、聞いたことのないような言葉を叫びながら山の中へと消えていったという。

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